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生意気さん カサカサさん

口元がかすかに微笑む

揺りかごにつつまれて

眠りは穏やかに

進むときを幸せにする



小さい手は てのひらを隠すぐらい

いっぱいに 握りしめられていて

産声の 限りなく叫んでいるような

力強さを 思い出すようで



・・・・・・

  私がお母さんよ

        ・・・・・・



と 見つめる眼に映る

おでこは ひろがって



ゆっくりと

やわらかな

光に照らされた肌を

指先で 触れてみる



いつの日だったろうか

「子供はだいっ嫌い」

と生意気言ったのは



あそび盛りの小娘が

カッコつけて

「赤ん坊は自分の意志が無いからいやだ」

なんて



いきてるのにね

うんっ

いきてる



おっぱいだってしっかり飲んでるし

うんちだってねっ

ほらっ

くちゃいくちゃい



ふふっ 昔の私が馬鹿みたい

おしめをかえるのも嫌じゃないし

泣くのも

あやすのも

みんなみんな好きなのよ



とでも思っているような顔は

少し懐かしそうに

揺りかごのなかの

頬に目をやって

(指を そっと 

そこにも

当ててみる)



いきてる いきてる

私だって いきてる



心地よい肌ざわり

この娘も生意気になって

「赤ちゃんはだいっ嫌い」

って言うのかな?



健やかな寝息が

繋いでいく眠り



・・・・・・

  私がお母さんよ

        ・・・・・・



たしかに赤ちゃんのときは

   あんなにちっちゃかったんだね

だれでもあんなときが

       あったんだよね



生意気でも 生きてるし

ちっちゃいけど いきてるし



てのひらを自分の頬に当ててみる

「あ~あ、カサカサな肌ねぇ」



カサカサでも 生きてるし



思わずにこっと笑みをうかべたら

揺りかごのなかの笑みも

いっぱい嬉しそうに

「よろしくね 生意気さん

 よろしくね カサカサさん」

と言ってるような

なにかしら小さな声でこたえてくれた



――ちん、ちりん――



風鈴の音色が

母と娘の静かな時に

こだまする



蝉の声も

揺りかごのなかの笑みには

子守唄で

心地よさそうに

寝息をたてていた



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